有限会社宮本タイル


タイル・レンガ・ブロック・左官・石工事・建築小工事

たんぽぽ

更新日:2013年7月1日

画像:たんぽぽ

『短い春』と人は言います。
特に、東北で生活をしていると、春は遅くやって来るもの、そして短いもの・・・そんな事を強く感じます。

雪解けを過ぎて、ようやく開花した桜には解き放たれた開放感を感じ・・・そして散り際の桜には、その潔さに、羨望と、憧れにも似た感情さえ覚えます。

葉桜の鮮やかさと同時に感じる春の終わり・・・。
「今年も短い春が行く・・・。」ふと、そんな事を思いながら道を行くと、街角のあちらこちらで黄色いたんぽぽの花を見かけます。

それは、満開の花で、春を謳歌する桜とは対極にありながら、ひっそりとしているのに鮮やかで、静かに人を励ましてくれている様な独特の存在感があります。
タイル業界に身を置く私は、たんぽぽを見かけると、ふと、こんな言葉を呟きます・・・。

「野丁場の桜・・・町場のたんぽぽ・・・。」
 知らない人が聞いたら「この人、何を言っているのだろうか?」なんて変人扱いされるかも知れませんね・・・。

 ビルの外壁や、伝統ある建物など・・・所謂「野丁場」の現場に張られているタイルには、存在感があり、青森の四季の移ろいの中で感じる美意識と壮大さが伝わります。
 でもその傍らで、古い御店屋さんや、お洒落な住宅など・・・所謂「町場」の現場に張られているタイルは身近にあって、懐かしさや温もりを感じさせてくれます・・・。

 昔、子供の頃、祖父のお使いで「ハイライト」を買いに行った煙草屋さんには、かわいいモザイクタイルが張られていました(今思うと、お使いに行った子供に煙草を売ってくれた、おおらかな時代でした。「おじいちゃんのお使いかな?えらいね・・・。」なんて煙草屋さんのおばあちゃんはニコニコ笑ってくれました・・・)。

 風邪をひくと、母親に連れて行かれた町のお医者さんの玄関には、味わいのある施釉の小口タイルが張られていて、子供心に、そのタイルを見ると痛い注射を連想しました・・・。
見わたすとタイルを身近に感じられる風景は、色々な場所で発見できる様な気がします。

 気がつけば、遠い思い出がタイルと共にあり、静かに人を励ましてくれる。
タイルがそんな存在感を放ちながら、いつまでも人の生活の中で共存してくれたら・・・。

 今年も・・・東北の短い春が終わります・・・。

【 多香彩 釉(たかさい ゆう)】
東北在住の、タイルをこよなく愛し、四季の移ろいの中で、風景に溶け込むタイルの美しさに魅了された謎のタイル人。